肛門内科とは
肛門内科では、主に肛門でみられる症状や病気を中心に、診察を行っています。
肛門部の症状を訴える患者様は多くいらっしゃいます。しかし、デリケートな部分であるため、受診しにくいと感じる患者様も非常に多いです。ただ、痔の症状と思って放置していたものが、直腸がんや肛門がんによるものであったなど、危険なケースも少なからず経験されます。そのため、症状がおありの方は早めの受診をお勧めします。
肛門内科で扱う主な疾患
※若年者に発症することが多いクローン病(炎症性腸疾患のリンク参照)は特徴的な裂肛、皮垂に加えて、多発痔瘻を認めることが多いです。
肛門疾患が診断のきっかけになることがあり、症状がご心配の方はぜひ一度当院を受診してください。
痔核(いぼ痔)
一般的にいぼ痔と呼ばれ、痔の中で最も患者数が多く3人に1人ともいわれています。肛門あるいは直腸の血流が悪化し、血液が滞ることでコブのような状態になることを指します。痔核には、肛門と直腸の間を隔てている歯状線より内側(直腸の部分)に発生する内痔核と、外側に発生する外痔核があります。
痔核が発生する主な原因としては、便秘、排便時のいきみ、長時間同じ姿勢を保つ(デスクワークで椅子に座り続けるなど)、寒冷下での作業、野菜不足の食生活、過度の飲酒などが挙げられます。
内痔核
内痔核は歯状線よりも内側に発生する痔核です。
症状は出血、痔核脱出による違和感、粘液漏出、かゆみなどがあり、痔核内に血栓形成などを伴うと痛みを感じることがあります。
内痔核の進行度(臨床病期)として下記のGoligher(ゴリガー)分類がよく用いられ、治療法選択の指標として用いられています。
- Ⅰ度: 痔核が肛門内にとどまっている
- Ⅱ度: 排便時に痔核が脱出するが、自然に戻る
- Ⅲ度: 痔核が脱出し、手で押し戻さないと戻らない
- Ⅳ度: 痔核が常に脱出している
治療
痔核の程度によって治療方法は異なりますが、Ⅰ~Ⅱ度の場合は、生活習慣(食生活の改善、トイレでいきまない、同じ姿勢を長時間とらない等)を見直し、薬物療法として坐薬や軟膏、内服薬(緩下剤や消炎鎮痛薬など)を用いることで症状緩和を目指します(保存的治療)。これらの治療方法だけでは腫れや出血などが改善されない場合、硬化療法(PAOやALTA注射療法)や痔核のゴム輪結紮療法、結紮切除などが選択されます。
保存治療以降の治療は外科治療となるため、専門医療機関へご紹介します。
外痔核
外痔核は、歯状線より外側、いわゆる肛門の周囲に発生する痔核です。痔核の中に血栓を形成したり、周囲に浮腫みを伴うことで、痛み、腫れ、出血などが生じます。
治療
外痔核治療の基本は、患部を入浴などで温めて血行を良くしたり、軟膏や坐薬、消炎鎮痛薬などの使用により、痔核を消退させる保存的治療です。血栓が大きい場合、痔核の痛みが強い場合や出血が続く場合には鎮痛剤を痔核血栓除去術を行います。
裂肛
裂肛は一般的に切れ痔と呼ばれ、主に肛門上皮が切れた状態を指します。原因としては、便秘で硬くなった便を排出することや、慢性的な下痢が挙げられます。特に20~40代の女性に多く見られます。
主な症状は、排便時の痛みやティッシュペーパーに着く程度の少量の赤い出血です。これが慢性的になると傷口が深くなり、潰瘍化することがあります。
慢性化した裂肛の前後には肛門ポリープ、見張りいぼ(皮垂)を認め、裂肛が瘢痕化を繰り返すことによる狭窄を認めることがあります。
治療
軟膏・坐薬による薬物療法を行います。日常的に食物繊維摂取を勧め、必要ならば緩下剤を投与し、硬い便を息んで出さないような生活を心がけることが大切です。
慢性的な裂肛により肛門狭窄が見られる場合は、肛門を拡張したり、瘢痕部を切除する外科治療が必要となります。必要であれば、専門医療機関をご紹介します。
痔瘻(あな痔)
肛門腺と呼ばれる部位が歯状線付近に存在しますが、そこに細菌(大腸菌等)が入り込んで感染・化膿することがあります。この状態を肛門周囲膿瘍といいます。さらに進行すると肛門とは別の排出口(トンネル:二次口)が作られ、直腸と皮膚がつながり、溜まった膿が排出されるようになります。これを痔瘻といいます。中高年の男性や下痢を繰り返す方が発症しやすいとされています。
主な症状としては、肛門周囲の腫れと痛み、発熱、膿の排出による下着の汚れなどがあります。
治療について
痔瘻は保存療法では治らず、手術が必要となります。内容としては、括約筋(肛門を締める働きをする)を痔瘻に沿って切除する切開開放術、トンネル状の痔瘻をくり抜いて切除することで、括約筋を温存する括約筋温存術、痔瘻が作られた管にゴム紐を通して縛り、時間をかけて括約筋を切開するシートン法などがあります。
こちらについても専門医療機関へご紹介いたします。